2023-24 Aグループ ガバナー補佐 石井亮一様
「四つのテスト」
アメリカの大恐慌のさなか、一人のロータリアンが4項目からなる倫理指針を考案しました。その後、国際ロータリーの基本理念に取り上げられ、現在もロータリーの最も素晴らしい声明の一つとして唱和されています。今日は、この四つのテストについて語りたいと思います。
この四つのテストの創案者であるハーバート J. テーラーは、1893年に米国ミシガン州に生まれ、イリノイ州エバンストンのノースウェスタン大学を卒業。卒業後、YMCAおよび英国陸軍福祉機関の任務で渡仏し、第1次世界大戦では米国海軍の補給部隊員として従軍しました。1919年に結婚し、米国オクラホマ州に新居を構えた、そして、同地でシンクレア石油会社に勤務しました。彼は1年後に同社を退社し、保険・不動産・石油リース仲介業を始めました。数年に及ぶこの事業でいささかの成功を収めた彼は、1925年にイリノイ州に戻り、シカゴのジュエル・ティー社に入社、とんとん拍子に昇進しました。そしてやがてシカゴロータリークラブの会員となりました。
1932年、ジュエル・ティー社の次期社長候補であったテーラー氏は、破産寸前状態にあったシカゴのクラブ・アルミニウム社の再建を依頼されました。この会社は、調理器具メーカーであり、総資産額を 40 万ドル上回る負債を抱え、倒産の瀬戸際にありました。 彼は、ジュエル社を辞め、これまでの給与の8割減という収入でクラブ・アルミニウム社の社長に就任しました。
信仰心の厚いテーラー氏は、同社を建て直し、大恐慌下の沈滞ムードを払拭(ふっしょく)するための手段として、社員たちに倫理的価値観を共有するための簡潔な指針を提供しようと思い、最初 100 語からなる文章を書きましたが、これは長すぎると判断し、そこでさらに推敲(すいこう)を重ね、それを7つの項目にまとめ、次に、自問形式の4項目にまとめ上げ、それが今日の四つのテストとなりました。
ある日のこと、販売部長が、調理器具5万点の注文が取れるかもしれないと発表しました。つの問題点がありました。 注文主は商品を値引きした額を希望していました。 製品を地道に宣伝し販売してきたディーラーに対して不公平となることから、この注文は断ることになりました。
1937年までに、同社の負債は完済され、その後の15年間では、株主に対して100万ドル以上もの配当が支払われました。 また、同社の純資産は200万ドル以上に達しました。
日本ではこの邦訳について、 ロータリー創立50周年の一つの事業として広く日本のロータリアンから邦訳を募集した中で、最も優秀なものとして選ばれたのが今日使っている「四つのテスト」です。
その意味を確かめてみましょう。
『四つのテスト』が『事業を繁栄に導くための四通りの基準』ならば、当然 Four-way tests と複数形になるはずですが、単数で表記されていること。4つを別々のものではなく一つとしてとらえています。
1. Is it the truth? 真実かどうか
嘘偽りはないかを問うだけではなく、定冠詞 the の使い方、お互いが特定した事実をさしており、あえて訳すならば、『それは、あの真実ですか?』と解釈出来る。真実と訳すのは、自問し遂行し得たものがを問われています。
2. Is it fair to all concerned? みんなに公平か
fair は公平ではなく公正と訳すべきとの指摘があります。 all concerned の all は訳されていますが、 concerned (関係する)は省かれています。 あえてすべてを訳すと『全ての利害関係者に対して公正か』となります。
3. Will it build goodwill and better friendship ? 好意と友情を深めるか
goodwill は単なる好意とか善意を表す言葉ではなく、商売上の信用とか評判も表しています。
これを訳すと『それは信頼を高め、友情を深めるか』となります。
4. Will it be beneficial to all concerned?みんなのためになるかどうか
通常、 『Benefit』 は 『儲け』 そのものを表す言葉です。 その商取引によって、 全ての取引先が適正な利潤を得るかどうかであり、『全ての利害関係者に恩恵をもたらすか』の意味が含まれると考えれます。
しかしながら、今唱和している四つのテストは、商取引以上に人生の生き方にも反映する言葉として、ロータリアンに受け継がれています。