卓話『癸卯(みずのとう)年 獅子搏兎で挑む飛躍への挑戦』若井あつこ様

卓話講師 岐阜県議会議員 若井あつこ様

卓話講師 岐阜県議会議員 若井あつこ様

卓話講師 岐阜県議会議員 若井あつこ様

獅子搏兎(ししはくと)、百獣の王ライオンは、小さくて弱い兎を捕える時も全力を出すことから、たとえ容易なことでも手を抜かず全力で取り組むということわざです。
その気概を持ち、卯年にあやかり飛び跳ねる兎のように飛躍する一年になることを願い、話を進めてまいります。
私は空手道界のエリートではありません。実は、4歳の頃に無免許の青年が運転する暴走バイクに正面衝突され重傷を負い、3ヶ月の寝たきり生活、4ヶ月間の入院生活を強いられました。退院後も後遺症に悩まされていた私の将来を案じた両親が、小学1年生のときに身体を鍛えるためにと空手道を習うよう勧めました。
しかし、空手道を習い始めたものの人より勝る体力もなく、社会人になっても「勝てない」時代を過ごしていました。
当時は20才前後が「スポーツ界の花形」と言われていた時代でしたが、私は遅咲きながら社会人になって世間から認められ、27歳で世界選手権初優勝、33歳で前人未到の世界選手権4連覇を果たすことができました。年齢的には確かに「遅咲き」ですが、勝てない時代に培った「反骨精神」があったからこそ世界一になることができたのだと、一見遠回りをしたようでも、これが夢への近道だったのではないかと思います。
「本当の勝者」とは、目先にある小さな花を咲かせたものではなく、その先の大輪の花を咲かせたものこそ「真の勝者」であることを、身をもって学ぶことができました。
これまでの現役選手時代の経験や、指導者となり多くの選手と向かい合ってきたなかで思うことは、初めから強い選手や、ずっと強くあり続ける選手はいないということです。
勝負は、強くなければ勝てません。しかし、強さゆえのおごりや、限界を知ることの挫折、迷いや誘惑、年齢的な衰えなど、永遠に勝ち続けることは不可能です。だからこそ本当の強さとは、力で相手に打ち負かすことではなく、挫折に打ち克つ心や負けない心こそが本当の強さだと、身に染みて感じています。
過去に私は、挫折に負けてしまうほどの辛い経験をしました。
それは私が世界選手権3連覇中だった頃、「優勝は若井の指定席」言われるなかで静岡国体に出場しました。しかし結果は、無名の大学生に初戦で敗北を喫し、これまで経験したことのない痛烈な苦しみを知ることになりました。当時の私の生活は空手が全てで、空手以外の夢をみたことがなかった私は、孤独の中で自暴自棄になり、社会との関わりを拒否し、生きていくことさえ嫌になることもありましたが、再び空手の道を歩むことを決意しました。なぜならば、敗北感に苛まれるなかで、私の世界チャンピオンとしての誇りとは、これまで手にしたタイトルでもメダルでもなく、空手に懸けてきた姿勢「生き様」でなくてはならない、ということに気付いたからでした。
そして、これからはどんなことがあっても二度と逃げ出したりしないと決意し、その「逃げない本気の覚悟」が、私を新たな可能性「前人未到の世界選手権4連覇」へと導いてくれました。
もしも、静岡国体の敗北で自分の人生を諦めていたのならば、今の私はありません。
諦めどきは人それぞれですが、100回やってできなかったことが101回目でできることがあります。なぜならば、100回やってもできなかった経験があったからこそ、101回目の成功につながったのだと考えることができます。
人はそれぞれ歩むスピードが違います。たとえ時間がかかろうとも、山頂を目指し自分の足で一歩一歩を進むからこそ、誰にも気が付かれずにひっそりと咲く1輪の花を見つけることができ、道の途中でしゃがみこんでいる人がいたらば肩を貸してあげられる、これもひとつの生き方なのではないでしょうか。
ロータリークラブの皆さまが提唱する多様性、公平さ、インクルージョン社会を実現するために、社会にたくさんの笑顔があふれるよう、私も一層の努力を尽くしてまいります。

卓話講師 若井あつこ様へ謝礼

卓話講師 若井あつこ様へ謝礼

2023年1月31日 | カテゴリー : 卓話 | タグ : | 投稿者 : gifunakarc