今回は、大同生命保険株式会社 岐阜支社 勝野恵子氏、および同社FP・相続コンサルタント 川上省氏をお招きし、「数字で見える化! 相続・事業承継」をテーマに、相続にまつわるデータを確認しながら事前対策の必要性について、卓話をしていただきました。担当:会計
1.相続税の申告実績
令和3年の全国の死亡者数は約144万人、相続税を申告された方が約13万人、課税割合は9.3%でした。岐阜県の課税割合は9.0%で全国平均を下回りますが、課税割合の全国平均値は、東京など大都市圏が押し上げていることが要因となっています。この数字はあくまで平均値なので、本クラブ員の方の多くは相続税を申告することになるのではないでしょうか。
2.相続税等の調査の状況
相続税で実地調査が行われた件数は約6.3万件ですので相続税の申告件数と比べるとそれほど多くはありませんが、非違割合(申告漏れ等の指摘を受けた割合)は9割弱でした。また、贈与税の非違割合は9割を超えています。申告漏れで後々指摘を受けないよう慎重な対応が必要です。
3.贈与税に対する実地調査の状況
贈与税の実地調査において指摘されたケースでは、財産種別の約7割が現金・預貯金等となっています。具体的にどのような指摘を受けているかは推測になりますが、その多くが「名義預金、借名預金」と言われていますので、注意が必要です。
4.家庭裁判所における遺産分割事件数
遺産分割でトラブルとなり、家庭裁判所で審理され終局を迎えたものについて、何回の審理を重ね、どれだけの期間を要したかを集計しています。ばらつきはあるものの、遺産分割で揉めると相当の時間と労力を要することが分かります。岐阜県でも1年間に200件以上の事件が取り扱われています。
5.遺産分割事件(容認・調停成立分)
遺産が多いから分割の際に揉めるのでは?と思いがちですが、結果としては、遺産価額の大小に関わらず、あらゆる層で遺産分割トラブルが生じていることが分かります。
6.まとめ
本日は、相続にまつわる数字を相続税や遺産分割の観点で取り上げました。相続には、さまざまな課題が存在し、いったんトラブルが発生するとその解決にはお金や時間、労力を要することになります。これらは、事前に対策を講じることで防止することができますので、予め弁護士や税理士などにご相談されることをお勧めします。
7.田邊会長からのお言葉
先ほど生前贈与の話がありましたが、稚拙に対応した結果、贈与として認められず、税務否認された話を耳にします。贈与をするのであれば、財産を渡しきる、もらう方にはもらったことを認識させることが大切です。名義預金、借名預金とならないよう、子どもや孫名義の通帳・印鑑は子どもや孫が自分自身で管理することが必要です。
相続では、様々なトラブルが想定されますが、相続税に関してであれば、税理士、遺産分割に関してであれば弁護士など、専門とされる方と事前にしっかり相談なさることが肝要です。